AIは学会の将来を照らすのか




元祐 昌廣 (東京理科大学)




 最近はAI(artificial intelligence,人工知能)ブームで,驚異的な速度で進歩して人間生活に急速に浸透してきている.「ロボットが人間に成り代わることができるか」という問いは昔から何度も聞く話で,形を少し変えて繰り返し問いかけられている.近年ではコンピュータが高度な情報処理能力を持ち,作業や計算だけでなく熱物性値の探索などをある程度任せることができるという報告例もある.「ChatGPT」は2022年11月30日にアメリカのAI会社OpenAIからリリースされた対話形式プログラムで,他と比較して回答精度の高さが話題であり,リリースから2ヶ月で世界のユーザー数が1億人を突破している.その優秀さから色々と物議を醸し,試験問題をAIが解くことができるということで,既にいくつかの大学はレポートや課題,試験を解かせて提出することの禁止声明を出している.
 この度,本誌の巻頭言という身に余る大役をAIに任せてみたいという欲にかられ,AI(ChatGPT Mar 23 Version)に学会の今後について聞いてみることにした.

:熱物性学会は今後どんな活動を行っていけば良いか?

答:熱物性学会は,以下のような活動を通じて,熱物性研究の発展に貢献していくことが望まれる.

  1. 1. 国内外研究者との交流強化:熱物性学会は,国内外研究者との交流を通じて,熱物性研究の国際的発展を促進している.今後も国際会議や研究者交流プログラムの開催などを通じて,国内外の研究者との交流を強化し,より多様な研究成果や技術情報を収集・共有することが必要.
  2. 2. 新たな熱物性測定技術の開発:熱物性測定技術の進化により,より高精度な測定が可能になっている.今後も熱物性測定技術の開発に注力し,より正確なデータの取得が可能な測定法や,新たな測定装置の開発を行うことが求められる.
  3. 3. 熱物性データベースの構築と解析:熱物性学会は,熱物熱物性データベースの構築と解析に取り組んでいます.今後もより多くの試料の測定データを収集してデータベースの構築を進め,大規模なデータ解析による新たな知見の発見を目指すことが必要.
  4. 4. 応用拡大:熱物性研究はエネルギー分野や材料科学など様々な応用分野に有用な情報を提供している.今後も,より多様な分野において熱物性研究が活用されるよう,研究者や産業界との連携を強化し,応用研究の拡大を目指すことが望まれる.

数秒でこの答えが出ることはすごいが,通り一辺倒な,どこかで聞いたようなことばかりの印象を持った.次は「熱物性学会の課題は?」と問うてみた.すると…

答:以下のような課題が存在しています.
  1. 1. 人材育成:熱工学や材料工学などの分野に深く関連しているが,熱物性学を専門に研究できる人材の不足が課題.若手研究者育成などの取り組みが必要.
  2. 2. 国際競争力の確保:熱物性研究分野は国際的にも高い競争力を持っているが,他国の研究機関との競争に勝つためには,研究成果の公開や国際的な学会や研究交流に積極的に参加することが求められる.特に最先端の研究を行うためには最新の研究機器や設備の整備が必要.
  3. 3. 産学官の連携:産学官連携による研究成果の実用化が求められる分野だが,産業界との連携が十分に進んでおらず,研究成果の産業応用が遅れている.学会を通じた連携促進の施策が求められる.
  4. 4. 社会貢献:研究成果はエネルギー政策や環境政策などの社会課題に貢献できるが,社会還元のための取り組みが不十分.研究成果の公開や,社会に向けた啓発活動など,社会貢献に関する取り組みが必要.

先と似たような質問だが,少し答えは変わった.ツールの使い方でアウトプットは変わるようである.AIの回答をベースに学会運営をすると結構大変そうに感じる.
 AIが学会や研究分野の将来を占い,行動変革を促進するのはもう少し先の話のように思えるが,やみくもに使用を禁止にせず,上手に利用していくのが良いように思う.

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